今回は「勉強のご褒美」のよくある失敗について考えます。

（前回までのおさらい）
やる気を高めるために次の2つが大事です。
・有能感を高める
・自己決定感を高める

⇒まだの方は前回の記事「③勉強の目的は何か？」もご確認ください。


◆ご褒美の失敗｜アルフィ・コーンの提唱
特に1970年代から多くの学者たちにより心理学の研究が進み、「ご褒美がやる気を奪う可能性」がわかってきました。それを分かりやすく啓蒙した１人が、アメリカの評論家アルフィ・コーンです。

ご褒美は「与えるべきか」「与えないべきか」を真剣に調べたことのある皆さんであれば、「ご褒美がよくない」という主張の大部分が、彼の提唱した「報酬の弊害」の焼き増しにすぎないとお分かりいただけるでしょう。


①報酬は罪になる
「これをすればあれをあげる」
「これをしないと怒るよ」

このようなやり取りには、コントロールする人とコントロールされる人が出てきます。

「これをすればあれをあげる」

コントロールされる側は「あれ」を目指して取り組みます。そうすることで「（自己・他者ともに）競争」が生まれます

競争に負けた子は、ご褒美をもらえず、もらえないことが「罪」となり、有能感が低下します。


②報酬は人間関係を崩壊する
「みんな大人しくしてたらおやつをあげる」

このような条件は、ワンパクな子供が悪者になります。

子供の幸せを願っておやつをあげるのか
先生の都合で大人しくしてほしいのか

どちらにしても、コントロールする側とされる側には信頼関係がなくては成り立ちません。コントロールされる側は、コントロールされていることに気付くと自己決定感が下がります。


③報酬は理由を無視する
なかなか寝付けない子供に対して、

「３つ数えるうちベッドに入らないと１週間テレビ禁止」
「３日間大人しく寝たらぬいぐるみを買ってあげる」
「なんでベッドから何度も起きてくるのかな？」

子供が寝付けないのであれば、子供の生活習慣に原因があるはずです。だから親は、早く眠れるように子供の生活習慣を正すべきです。

しかし親は、「寝付けない」というその瞬間の行動だけを見て、原因を解決せずに、子供に賞罰をつけています。無理矢理に子供の行動をコントロールするだけで、原因が解決されません。


④報酬は冒険を水にさらす
人は報酬目当てで働くとき、報酬を得るのに必要なだけの仕事をやり、それ以上はやりません。

評価システムができると人は評価される項目の範囲でしか動きません。往々にして最終目標である数字を中心に物事を進めがちになり、項目にない総合的な判断は指標化、定量化しにくいものです。


例えば定期テストの点数をご褒美の条件とした場合、一夜漬けで勉強しテスト後にはすっかり学習内容を忘れてしまったり、ワークなどの提出物はやらず通知表の点数は低かったりするかもしれません。


⑤報酬は興味を損なう
⑥報酬は使い出したら簡単に止められない

⇒「②「勉強のご褒美」の種類と効果」を参照


⑦報酬はそれを得るための手抜き最短ルートを選ばせる

読書を例にします。
「１年で最も本を多く読んだ子にご褒美をあげる」

このような条件を提示した場合、じっくり読まずに読み飛ばす子が出てきます。とにかく数を多く借りる子が褒美を得てしまいます。



◆まとめ
思いつきでご褒美を与えると失敗します。
何気ない声掛けが、子供のやる気を奪う可能性もあるようです。

ついつい、このようなご褒美を与えていないか、注意が必要ですね。

次回は、効果的なご褒美の方法について考えてみたいと思います。



（参考文献）
・アルフィ・コーン　2001「報酬主義をこえて」田中 英史 （訳），法政大学出版局

【関連ニュース】
①勉強のご褒美が良くないは本当か？
②「勉強のご褒美」の種類と効果
③勉強の目的は何か？
⑤とにかく勉強させる！


【2021年夏期講習について】
・最新情報、お得な特典はこちらから！
・アシストの夏期講習はここが違う！


【新・個別指導アシスト習志野校について】
・初回2週間無料！中学生定期テスト対策講座
・成績アップの秘訣！効果抜群のトリプル指導で合格へ導きます！
・学びホーダイ‼とは？
・よくあるご質問